レビュー
評点
総合評価: 8
明瞭性: 8.5
応用性: 8.5
情報の価値:8
動画を見た感想
投資の世界で正しい知識を身につけることが出来る有益な動画である。
今回は、楽天証券主催の「株式投資アカデミー」で経済コラムニストの大江英樹氏の解説動画を紹介したい。
前回の「プロが教える投資心理学」の続編で、今回は投資家が陥りがちな9つの勘違いを分かりやすく解説してくれる。
私も前回の動画と今回の動画を観て、自分がいかに多くの勘違いをしていたかを痛感したのである。
この動画を通じて大江氏が一番伝えたいことは、
- 投資の世界には多くの【勘違い】が存在する
- 印象で判断せず、ファクト(事実)で判断する
- 情報を集めること以上に【自分で考えること】が大切
上記の3つだという。
この動画を観れば、自分の投資マインドが大きく改善するはずなので、是非ご覧頂きたい。
この動画で分かること
- 自分が投資の世界で、いかに多くの勘違いをしていたかを実感できる
- 知識は自分を守る武器なのだと実感できる
- 他の投資家が、多くの勘違いをしていることに気づける
動画の要約
今回の動画では、「投資家が陥りがちな9つの勘違い」をテーマに解説されている。
①:専門家への勘違い
投資初心者によくありがちな勘違いで、「金融機関の人は専門家である」と思い込んでおり、大江氏は「金融機関の人は金融商品を販売するプロであり、相場を的中させる専門家ではない」と説明している。
金融機関が販売している商品の知識はプロであるが、投資のプロではないということだ。
金融機関の言うとおりに商品を買っても、思い通りの結果になるケースは少ない。
しかし、投資の世界はプロが必ず勝つわけではなく、アマチュアでもプロに勝ってしまうことが時々起こりえるのが投資の世界とも言っている。
②:分散投資の勘違い
分散投資の重要性を表現する有名な言葉に、「ひとつのカゴにタマゴを盛るな」というものがある。
大江氏はこれこそが勘違いの元凶なのだと説明している。
つまり、この表現だと「いろんなものにお金を分散して投資しておけば、どれか一つが失敗しても大丈夫だろう」という認識になるが、これこそが良くないらしい。
資産管理と投資におけるリスクの違い
リスクに対する考え方は大きく2つあり、一つが資産管理のリスク、もうひとつが投資のリスクである。
「ひとつのカゴにタマゴを盛るな」という言葉の真意は、「資産管理のリスク」のことで、
- 流動性
- 収益性
- 安全性
上記の3つのバランスを保つために、財産の毀損を避けるために資産の置き場所を分散することが、ひとつのカゴにタマゴを盛るなという言葉の意味なのである。
ところが「投資のリスク」は全く違う。
投資のリスクとは、結果が不安定なので、これを避けるために値動きの異なる対象に分散することが投資のリスクを軽減することになる。
例えば、「分散投資しなきゃ!!」といってトヨタ自動車や日産自動車の株に分散投資するのは、同じ様な値動きになるので分散投資とはいえない。
大切なことは、価格の動きが負の相関関係(逆の値動き)にある銘柄に投資すること。
③:テーマ株投資の勘違い
近年では、「脱炭素」「AI」「メタバース」などの特定のテーマに限定した投資信託商品などが増えている。
しかし、大江氏はテーマ株の問題点を3つ指摘している。
- 投資対象を狭めてしまうことによるリスク
- 玉石混淆(ぎょくせきこんこう)になっている
- タイミングを間違えやすい
上記の3つのリスクについて、動画の中で詳細に説明している。
④:基準価額に対する勘違い
多くの投資家は基準価額自体で投資信託(ETFを含む)を買うかどうかを判断しがちである。
しかし、基準価額自体に投資判断の材料になるものはない。
例えば個別株の株式は、その企業自体の価値と現在の株価との間に乖離があるかどうかを判断して売買の決断をするが、投資信託の基準価額そのものには価値基準はない。
⑤:外貨投資の勘違い
外貨を持っておくことが資産分散になると勘違いしている人が多いらしい。
我々が日常生活で外貨を使うことはまずないし、為替で利益をあげようという行為は投資ではなく投機行為である。
⑥:投機と投資の勘違い
世の中の8割の人は、投資は博打だと思っているという。
大江氏によると世間では間違った三段論法が浸透しているが、正しい三段論法も解説している。
間違った三段論法
- 博打はきな臭い
- 投資は博打ではない
- だから投資はきな臭くない
正しい三段論法
- 投資には博打という一面もある
- 博打はきな臭くない
- だから投資はきな臭くない
博打にまつわるインチキやイカサマ(インサイダーや粉飾決算など)がダメなのであって、博打そのものは、決してうさんくさいものではない。
⑦:リスクとリターンの勘違い
ハイリスク・ハイリターンの正しい意味は以下の1番と2番のどちらか?
- リスクの高いものはリターンも高い
- 高いリターンを望むと必ずリスクは高くなる
正解は2番。
一見すると同じ様な意味に見えるが、正しい理解の仕方を動画で解説している。
では次にローリスク・ローリターンの正しい意味はどちらか?
- リターンの低いものはリスクが低い
- 低いリスクのものは低いリターンしか得られない
なんとなく分かったと思うが正解は2番。
⑧:コントロールできると思う勘違い
運用で是非知っておくべきことの中に、コントロールできないものとコントロールできるものがあるという。
コントロールできないものとは?
まずはリターン(利益)はコントロールできない。
たとえ今まで利益を出してきていたとしても、これからもずっと利益を出し続けることが出来るかどうかをコントロールすることは絶対にできない。
しかし、人間はリターンをコントロールできると錯覚している人が多すぎる。
コントロールできるものとは?
逆にコントロールできるものは3つある。
- Allocation(資産配分)
- Risk(運用結果のブレ)
- Cost(手数料)
上記3つの中で最も簡単にコントロールできて重要なのが、Cost(手数料)である。
長期投資であればあるほど、手数料が安い方が絶対に得になっていく。
⑨:福利の概念に対する勘違い
時々、「3%の利回りがある!」とか、「米国インデックスなら5%の利回りが確実だ!」という表現が出回っているが、もともと変動商品に確定した利回り運用という考え方は正確ではない。
預金や債券の場合は、毎年一定の利率が決まっているので複利効果が正確に見いだせるが、変動商品の場合は毎年利回りが大きく異なるし、ある年はマイナスの時もある。
変動商品の複利の意味は、増加した利益を分配しないでそれを再投資することで複利効果を享受できるのである。